厚労省によれば、70歳以上の働く高齢者の数は20年前より440万人も増加し、それでもまだ「働きたいが働いていない高齢者」の割合は70代前半で27%に達する。
「年齢に関わりなく働き続けるエイジレス社会を実現する」
政府の「働き方改革実現会議」は今年3月にそう決定した。一見、高齢者にとって歓迎すべき方針に思える。だが、それに合わせるように内閣府の別の有識者会議(「高齢社会対策の基本的在り方等に関する検討会」)では年金の75歳受給の議論が始まっている。
「働き方改革」とは、高齢者を“まだまだ現役”とおだてて75歳まで働かせ、その間は年金を支給せずに、保険料を納めさせようという意味がこめられている。
安倍政権は内閣改造のたびに政策の看板を掛け替え、「健康長寿社会」「一億総活躍」「働き方改革」など耳当たりの良い言葉を並べてきた。その言葉のひとつひとつに高齢者狙い撃ちの政策が隠されている。
8月3日に発足した今回の“仕事人内閣”が掲げたのは「人づくり革命」だ。
「どんなに貧しい家庭に育っても、希望すれば高校にも、専修学校、大学にも進学できる。子供たちの誰もが夢に向かって頑張ることができる日本でなければなりません。人づくりこそ次なる時代を切り拓く原動力であります」(6月19日、安倍首相記者会見)
この言葉を聞く限り、人づくり革命は経済的に苦しい家庭への就学支援を増やすことだと想像するが、それは方便にすぎない。具体的な施策を議論するために内閣に設置された有識者会議「人生100年時代構想会議」の名称が“革命”の正体を端的に表わしている。