中国の経済成長の象徴のような都市・深センの郊外には、地方出身の出稼ぎ者が集まるスラムが点在する。なかでも龍華新区は職業斡旋所が集中し、人々の間ではある斡旋所の名から「三和」と呼び慣らわされている。三和に集まる20~30代の若者には、ネットゲーム(ネトゲ)などにからめとられ、日本より発達したヴァーチャル決済によって借金を膨らませる者も多い。中国のネット上で「三和ゴッド(三和大神、サンホーダーシェン)」と呼ばれる彼らの姿を、ノンフィクションライター・安田峰俊氏が現地からレポートする。
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「将来の目標は……三和の堕落した暮らしから抜け出すことかな。でも、きっと無理だろうね」
異口同音に語るのは、現在も三和で暮らす短期労働者の阿飛(アーフェイ、仮名、湖南省チン州市出身30歳)と老白(ラオパイ、仮名、湖北省荊州市出身32歳)だ。いずれも両親は出稼ぎ農民。それぞれ、若いころに深センに流れ着いて短期労働を繰り返すうち、30代になってしまった。
「俺は肺が悪いらしく、鴻海や日系企業のような採用時の健康診断がある工場では働けない。ろくに労働基準法を守らない中国系工場に行くしかないんだ」
そう語る老白の貯金はゼロ。仲間とのトランプ賭博の負けが込んだのに賭け続け、オンライン闇金の借金が1万元(約17万円)に膨らんだ。月収の4倍の金額であり、返済のメドはまったく立たない。