首都圏を中心にマンション価格が上昇を続け、“ミニバブル化”の様相を呈している。そのため、初めから「売る」「貸す」ことを目的としたマイホームの購入を煽る向きもあるが、「不動産投資は決して甘い世界ではない」と警鐘を鳴らすのは、近著に『マイホーム価値革命』の著書があるオラガ総研代表取締役の牧野知弘氏だ。
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マンション価格が高騰している。不動経済研究所の発表によれば、2017年上半期に首都圏(1都3県)で供給された新築マンションの平均分譲価格は5884万円、5年前である2012年上半期の4517万円に比べて約30%もの大幅な上昇である。
中古マンションも新築の値段に「つれ高」となり、東京カンテイの調査によれば2017年6月の首都圏における中古マンションの価格は3562万円、5年前の2012年と比べるとやはり25%も上昇している。
こうした現象から、マンションは「早く買わなければ、買えなくなってしまう」あるいは「マンションを買えば儲かる」といった心理状態に人々が陥り、巷でもマンションの購入や投資を推奨する本が良く売れているという。
さてこの現象、一見すると平成バブル期のように、マンションを買えば、多くの含み益が得られ、将来売却すれば住宅ローンの返済はもちろん、大きな利益が得られると考えがちであるが、本当だろうか。
マンションを巡る議論で目立つのが、マンション購入が「実需」に基づく行動なのか、「投資」に基づく購入であるのかをごっちゃにしていることだ。
ここ数年のマンション価格の高騰は、国内外の投資マネー流入の影響と、高齢者の急増による相続対策としてのマンション投資という「投資」としての要因と、駅前タワーマンションの大人気に見られるような、人口減少や高齢化を起因として利便性の高い主要ターミナル駅の駅前に集結する、コンパクトシティ化現象とも呼ぶことができる「実需の変化」による要因とに分けて考えることが肝要である。
「投資」というのは、物件を買って「はい、終わり」という行動ではない。物件を買う=投資を行うのが「入口」とするならば、その物件を売却して利益を得るという「出口」があってはじめて「投資」という行動は完結する。
国内外の投資マネーを扱うのはもちろん投資のプロたちだ。入口から入場したあとは、常に出口を求めて目を光らせている。つまり、投資したマンションは常に2年から3年程度という短期で売却することを狙い、中長期に保有しようという意向は初めから持ち合わせてはいない。
また、相続対策で買う高齢富裕層は、相続税の節税が目的であるから、相続というイベントが終了することが出口ということになる。
いっぽう、「実需」としてマンションを購入するのは、マンションに「住む」ことを目的とした人たちだ。最長35年にもおよぶ住宅ローンを組んで、マイホームとしてマンションを選択した人たちにとって、自身が苦労をして買ったマンションの値段が、購入後上昇したとしても、すぐに買い替えて引っ越しを繰り返すことはあまり現実的な行動とはいえない。
まったく異なる動機で買っているのにもかかわらず、「実需」としてマンションを買う人たちの間に、「実需」としての目的のみならず「投資」=「儲かる」という願望を同時に叶えてほしいという本音が垣間見えるのだ。
それでは、果たして「投資としての成功」と「実需としての満足」を同時に満たすようなマンションというのは存在するのだろうか。
結論を先に言えば、世の中のほとんどのマンションは、中長期で所有する限りにおいては不動産価値を保てなくなることは明らかだ。その理由は次の7つに集約される。