ビジネス

不動産投資の罠 マンション価値が保たれなくなる7つの理由

「投資の成功」と「実需の満足」を同時に満たすマンションはない

 首都圏を中心にマンション価格が上昇を続け、“ミニバブル化”の様相を呈している。そのため、初めから「売る」「貸す」ことを目的としたマイホームの購入を煽る向きもあるが、「不動産投資は決して甘い世界ではない」と警鐘を鳴らすのは、近著に『マイホーム価値革命』の著書があるオラガ総研代表取締役の牧野知弘氏だ。

 * * *
 マンション価格が高騰している。不動経済研究所の発表によれば、2017年上半期に首都圏(1都3県)で供給された新築マンションの平均分譲価格は5884万円、5年前である2012年上半期の4517万円に比べて約30%もの大幅な上昇である。

 中古マンションも新築の値段に「つれ高」となり、東京カンテイの調査によれば2017年6月の首都圏における中古マンションの価格は3562万円、5年前の2012年と比べるとやはり25%も上昇している。

 こうした現象から、マンションは「早く買わなければ、買えなくなってしまう」あるいは「マンションを買えば儲かる」といった心理状態に人々が陥り、巷でもマンションの購入や投資を推奨する本が良く売れているという。

 さてこの現象、一見すると平成バブル期のように、マンションを買えば、多くの含み益が得られ、将来売却すれば住宅ローンの返済はもちろん、大きな利益が得られると考えがちであるが、本当だろうか。

 マンションを巡る議論で目立つのが、マンション購入が「実需」に基づく行動なのか、「投資」に基づく購入であるのかをごっちゃにしていることだ。

 ここ数年のマンション価格の高騰は、国内外の投資マネー流入の影響と、高齢者の急増による相続対策としてのマンション投資という「投資」としての要因と、駅前タワーマンションの大人気に見られるような、人口減少や高齢化を起因として利便性の高い主要ターミナル駅の駅前に集結する、コンパクトシティ化現象とも呼ぶことができる「実需の変化」による要因とに分けて考えることが肝要である。

「投資」というのは、物件を買って「はい、終わり」という行動ではない。物件を買う=投資を行うのが「入口」とするならば、その物件を売却して利益を得るという「出口」があってはじめて「投資」という行動は完結する。

 国内外の投資マネーを扱うのはもちろん投資のプロたちだ。入口から入場したあとは、常に出口を求めて目を光らせている。つまり、投資したマンションは常に2年から3年程度という短期で売却することを狙い、中長期に保有しようという意向は初めから持ち合わせてはいない。

 また、相続対策で買う高齢富裕層は、相続税の節税が目的であるから、相続というイベントが終了することが出口ということになる。

 いっぽう、「実需」としてマンションを購入するのは、マンションに「住む」ことを目的とした人たちだ。最長35年にもおよぶ住宅ローンを組んで、マイホームとしてマンションを選択した人たちにとって、自身が苦労をして買ったマンションの値段が、購入後上昇したとしても、すぐに買い替えて引っ越しを繰り返すことはあまり現実的な行動とはいえない。

 まったく異なる動機で買っているのにもかかわらず、「実需」としてマンションを買う人たちの間に、「実需」としての目的のみならず「投資」=「儲かる」という願望を同時に叶えてほしいという本音が垣間見えるのだ。

 それでは、果たして「投資としての成功」と「実需としての満足」を同時に満たすようなマンションというのは存在するのだろうか。

 結論を先に言えば、世の中のほとんどのマンションは、中長期で所有する限りにおいては不動産価値を保てなくなることは明らかだ。その理由は次の7つに集約される。

関連キーワード

関連記事

トピックス

氷川きよしが紅白に出場するのは24回目(産経新聞社)
「胸中の先生と常に一緒なのです」氷川きよしが初めて告白した“幼少期のいじめ体験”と“池田大作氏一周忌への思い”
女性セブン
公益通報されていた世耕弘成・前党参院幹事長(時事通信フォト)
【スクープ】世耕弘成氏、自らが理事長を務める近畿大学で公益通報されていた 教職員組合が「大学を自身の政治活動に利用、私物化している」と告発
週刊ポスト
阪神西宮駅前の演説もすさまじい人だかりだった(11月4日)
「立花さんのYouTubeでテレビのウソがわかった」「メディアは一切信用しない」兵庫県知事選、斎藤元彦氏の応援団に“1か月密着取材” 見えてきた勝利の背景
週刊ポスト
多くのドラマや映画で活躍する俳優の菅田将暉
菅田将暉の七光りやコネではない!「けんと」「新樹」弟2人が快進撃を見せる必然
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
「週刊ポスト」本日発売! 小沢一郎が吠えた「最後の政権交代を実現する」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 小沢一郎が吠えた「最後の政権交代を実現する」ほか
NEWSポストセブン