食品が食べられずに廃棄される「食品ロス」の削減に、自治体、スーパーなどが取り組んでいる。だがいちばん意識を持たなければいけないのは、消費者ではないだろうか。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が解説する。
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気温、湿度とも高い夏場は、食中毒や賞味期限にも敏感になる季節だ。だが、賞味期限/消費期限問題には、相反するもうひとつの側面もある。食べられるにもかかわらず廃棄される食品──いわゆる「食品ロス」問題だ。
まず押さえておきたいのは「賞味期限」と「消費期限」の違い。賞味期限は劣化が比較的遅い食料品について「おいしく食べられる期限」を示したもの。缶詰やインスタント麺、スナック菓子など加工食品と、卵、牛乳、納豆など一部の生鮮食品への表示が義務づけられている。一方、消費期限はパックされた魚や肉、惣菜、弁当、サラダなど、劣化の早い食品が対象だ。
ざっくり言うと賞味期限はおいしさを担保し、消費期限は安全を担保する。実はこの表示義務は1995年にそれまでの「製造年月日」から「期限表示」へと変更されたもので比較的歴史は浅い。21世紀に入ってからも、食品メーカーや飲食店の表示偽装問題が起きるたびに、名称・制度の変更や「製造年月日」の表示復活が話題にのぼったが、現在に至るまで制度自体の大きな変更には至っていない。
もっとも当初「わかりにくい」と言われた制度表示も、認知を得てきている。今年6月に実施された「賞味期限・消費期限に関するアンケート」(ネットリサーチのディムスドライブ調べ)では「賞味期限と消費期限の違い」について「知っていた」(48.5%)、「なんとなく知っていた」(40.2%)の合計が88.8%となっている。ざっくりでも制度についての理解は進んでいると考えてよさそうだ。
環境省の最新の推計では2014年度の食品廃棄物(事業系+家庭系の合計)は1661万トン。そのうち可食部分とされる「食品ロス」が621万トンとなる。内訳は事業系の「規格外品、返品、売れ残り」などが339万トン、家庭用の「食べ残し、過剰除去」などが282万トンだ。
事業系での対策はゆっくりとではあるが進んでいる。例えばメーカーでは、味の素が主力商品の賞味期限表示をこれまでの「年月日」から「年月」までにとどめるように表示を変更。昨年以来、飲料や菓子などで年月表示は導入されてきたが、加工食品にまで導入されることで食品ロス削減につなげる狙いだ。
流通でも、スーパーの西友が菓子や牛乳、ヨーグルトなど、賞味期限や消費期限切れ前の食品を回収し、福祉施設に寄付する取り組みを行っている。
食品ロス削減に積極的な自治体もある。東京都はメーカーや卸、スーパーなど複数の業界が参加する「ステークホルダー会議」を立ち上げ、「3分の1ルール(※)」などの見直しにも踏み込むという。
【※3分の1ルール 製造日から賞味期限までの期間を3分割し、最初の期間を「小売店への納品期限」、次を「店頭での販売期間」、最後の3分の1は賞味期限が残っていても返品などに回される商慣習。最初の3分の1の期間に小売店へ納入されないと、その時点で廃棄か返品のリスクが高くなる】