平成に区切りが来ようとしている。改めて平成という時代を考えるための本7冊をジャーナリスト・評論家の武田徹氏が選んだ。
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今でも思い出せる。最初の著書を用意していた時、テレビは昭和天皇の深刻なご病状を刻々と伝えていた。その本が世に出た頃には元号が改まっていた。
平成は平静な時代になるはずだった。国際的には冷戦が終わりつつあり、国内で筆者と相前後して社会デビューした若者たちは、全共闘世代と違って戦いも群れることも好まない無共闘世代と呼ばれ、人畜無害と目されていた。
ところが「東西」冷戦構造が緩むと「南北」と「天地」問題が表面化。新自由主義とグローバリズムは南の途上国と北の先進国の経済格差を深め、天の論理を地で争う宗教紛争が多発する。国内でも格差化が進み、新新宗教が過激化した。加えて阪神と東北で震災が発生、原発事故まで起きた。普及したインターネットが世間の動きを良くも悪くも増幅し、歪ませた。
結果的に平成は平静とは程遠い、騒々しく、諍いの絶えない時代となる。そんな時代を象徴する7冊を選んでみた。
◆連続幼女殺害犯「M」を語る
『Mの世代 ─ぼくらとミヤザキ君─』
大塚英志・中森明夫・他著/平成元年(1989年)刊/太田出版/中古価格
平成元年8月、26歳青年が連続幼女殺害を自供。自宅に殺到した報道カメラはビデオテープが積み上げられた彼の自室を映した。M(宮崎勤)をメディアに包囲されて育った同世代の犠牲者として弁護した大塚英志と「オタク」の命名者・中森明夫の対談を軸に、いとうせいこう、香山リカなど若手(当時)が寄稿。