加えて今回の調査では、がん以外の病気や事故によって死ぬ割合を除いた「5年相対生存率」が採用されているため、がん治療成果の実績がより正確に示されているといえる。

 国立がん研究センターが公表した施設ごとの5年生存率の中から、「3大がん」と呼ばれる胃がん、大腸がん、肺がんの全国147施設のデータを抽出してまとめた。データをもとに算出した3大がんの平均値は、次の通りだ。

●胃がん:5年生存率69.5%、ステージIV患者率20.7%
●大腸がん:5年生存率72.8%、ステージIV患者率19.9%
●肺がん:5年生存率39.6%、ステージIV患者率29.3%

 もちろん、病院ごとの数字を見た時に「生存率」が高いことは評価されるべきだが、注意すべきは、「5年生存率が低い病院」が必ずしも「治療技術の低い病院」とは限らないことだ。

 前出の岡田医師は、がん治療の質を見極めるには、「5年生存率」とともに「がんのステージ」が重要だと指摘する。

「5年生存率の低い病院はステージIV(がんが進行し、他の臓器にまで転移している状態)の患者が圧倒的に多く、ステージI(がんはあるものの、リンパ節までは転移していない状態)が少ない傾向にある。末期がんを積極的に受け入れる中核拠点病院ほど生存率が低くなりやすいということです。逆に生存率の高い病院はステージIVの患者が少ないところが多い。こうした傾向を踏まえてデータを読み解く必要があります」

 実際、がんの進行度と生存率の低下が他の部位より密接に関連するといわれている肺がんの場合、147施設のうち最も高い病院の5年生存率は68.9%だが、最も低い病院は13.3%だった。これは治療の優劣というより、どのステージの患者を受け入れたかが影響した結果と考えられる。

※週刊ポスト2017年9月1日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
”クマ研究の権威”である坪田敏男教授がインタビューに答えた
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン