国立がん研究センターが8月9日、全国の病院別に集計したがん患者の「5年生存率」を初めて公表した。2008年にがんと診断された患者が対象となり、国が指定する「がん診療連携拠点病院」209施設・21万4469症例もの膨大な治療成績を分析したもので、個別データの公表に応じた188の施設ごとに、主要5部位(胃、大腸、肺、肝臓、女性乳房)の5年生存率が明らかになった。
がんについての著書が多い、新潟大学名誉教授の岡田正彦医師は「施設ごとの公表は有意義な試み」と評価する。
「これまでも特定のがん専門病院の5年生存率は公表されていたが、全国規模でこれだけ多くの施設の実績が公表されるのは初めてです。膨大なデータを分析したことで、がん治療の実態がより正確にわかるようになったことにも価値があります」
5年生存率のほかにも、患者の年代や、「ステージ(がんの進行度)」別の患者数、手術の有無なども明らかにしている。調査を担当した国立がん研究センター・がん対策情報センターがん登録センター長の東尚弘氏は、「今回の集計では、患者の年齢や基礎疾患の有無、治療開始時のがんの進行度などを考慮しておらず、各施設における生存率の違いがただちに診療の優劣を示すものではない」と留保するが、「5年生存率」が患者にとって重要な指標であることは間違いない。
5年生存率とは、「がんと診断された患者が5年後に生きている割合」のことだ。
「多くのがんでは、治療してから5年経過するまでに再発がないと『治癒』と見なされ、それ以降に再発するケースは少ない。そのため、5年生存率はがんの治療効果を判断するための重要な目安なのです」(前出・岡田医師)