散歩ばかりしているという作家で劇団「鉄割アルバトロスケット」主宰の作家・戌井昭人氏による週刊ポスト連載「なにか落ちてる」より、親族の家に突然現れた新手の詐欺(?)騒動についてお届けする。
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先日一人暮らしの叔母の家に、朝6時、突然中国人の男がやってきて「金返せ!」と言ってきたそうです。叔母は金を借りた覚えなどまったく無かったのですが、男は、叔母の名前も知っていて、「あんたは、ここでマッサージをしていた、でも明日摘発されるから、その前に金を返せ」と。男は知人に頼まれ、代理で来たそうですが、そもそも叔母はマッサージなんてやったことはなかった。
それでも男は「金返せ」と言い続けるので、困り果て、上の階に住んでいるうちの両親に助けを求めに行き、戻ってくると、男はいなくなっていたそうです。男は本当に摘発されるマッサージ店と間違えてやって来たのか? それとも新たな詐欺なのか? 真相はわかりませんが、身に覚えがないのに、突然「金返せ!」と誰かがやってきたら、すぐに警察を呼びましょう。
詐欺といえば、うちの母は、オレオレ(振り込み)詐欺に騙されかけたことがあります。ある日、「お母さん、お母さん」と、わたしが泣きじゃくって混乱した電話がかかってきて、次に警察を名乗る男に、「息子さんが、交通事故を起こして、大変なことになった」と言われ、今度は母が混乱して話にならなくなったので、向こうが、十分後にまた電話をかけると言ってきました。
そのとき、わたしがちょうど帰宅、母は、「あんた! 大変なことになったのよ!」と言い出し、わたしが起こしたという事故のことを興奮気味に話しはじめました。まるで落語の粗忽長屋(そこつながや)みたいな展開、「事故を起こしたのは俺だけど、ここにいる俺はいったい誰なんだ?」といった感じです。