「子や孫の世代にツケを回さない」──高齢者の年金召し上げなど政府が社会保障費をカットするときの決まり文句がこれだ。
かつて「全額社会保障財源に使う」と自公民3党で消費税増税を決めたときに自民党はそう公約した。安倍改造内閣の「人づくり革命」のベースになった自民党「2020年以降の経済財政構想小委員会」の中間報告にもこう書かれている。
〈現在の社会保障は、給付と負担が均衡しておらず、多くの部分を将来世代に先送りしている。今後、高齢化が更に進む中で、現在の給付構造を維持したままでは、高齢世代に偏った給付が拡大する一方、現役世代に更なる負担をもたらす〉
そう聞かされれば孫の顔が浮かび、「孫が困らないように年金を我慢してみようか」とつい思ってしまっても無理はない。だが、そんな“泣き落とし”に騙されてはいけない。
「現在の政府の政策は子孫にツケを残しまくるものといって間違いない」
そう指摘するのは経済ジャーナリスト・荻原博子氏だ。
「子孫が社会保障負担に苦しむからと消費税を上げた。でも考えてください。今60歳以上の高齢者は税率3%の時代から30年しか消費税を払っていないが、孫の世代は生涯消費税を取られ、税率も8%から10%へと上がっていく。つまり、ツケを払わされているのです。
社会保険もそう。年金は高齢者への支給を減らすと同時に、保険料引き上げも決められている。介護保険は現在40歳以上から徴収している保険料を、今後は20歳以上の全員に負担させる議論が進んでいる」