いまや世界のIT企業や人材が集まっているのは、中国・広東省の深センだ。経営コンサルタントの大前研一氏が、深センが発展してきたこれまでの道のりと、その理由について解説する。
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中国のモバイル決済サービス「アリペイ(Alipay=支付宝)」を提供している中国eコマース最大手のアリババと中国SNS最大手の「ウィーチャットペイ(WeChat Pay=微信支付)」を提供しているテンセントは、時価総額でも世界トップテンに入っている。だが、中国で注目すべきはこの2社だけではない。
いま日本人は中国・深センと聞いて、どんな街を想像するだろうか? もともと深センは1980年、トウ小平の「改革開放政策」を担う最初の経済特区の一つに指定され、それ以降、急速に発展して今や「中国のシリコンバレー」と呼ばれる人口約1200万人の巨大な知識集約型IT都市になりつつある。
ただし、当初は香港と隣接(電車で約40分)していながら中国本土の安価な労働力を利用できるため、主に香港企業が労働集約型の組み立て工場を展開しているにすぎなかった。私が深センを初めて訪れたのは、1980年代後半。当時、中国政府には資金もインフラ整備のノウハウもなかったので、香港から深センを経由して広州に至る高速道路を香港ホープウェルグループ(合和集団)のゴードン・ウー(胡應湘)氏に建設してもらうような状況だった。
私は香港のIDTという会社の社外役員を務めていたので、それ以降も同社の工場視察でよく訪れたが、その頃の深センはまだゴミ溜めみたいな貧しい町だった。