O157による食中毒が毎年のように繰り返される事故を未然にふぜぐにはどうすればいいのか。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が対策法を考える。
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今年もO157による食中毒が起きた。埼玉県の惣菜店で販売されたポテトサラダを食べた客が下痢や腹痛を訴え、その便から腸管出血性大腸菌O157が検出された。腸管出血性大腸菌というと2011年の焼肉店で起きたユッケ集団食中毒事件の印象が強いが、野菜を経由しての腸管出血性大腸菌による食中毒も少なくない。
もともとは牛などの「大腸菌」由来の食中毒ではあるが、肉ならばまだしっかり加熱することで食中毒からは逃れられる。だが生野菜や漬物、ポテトサラダのように調理の最終工程で加熱を経ない食べ物には常に食中毒リスクはつきまとう。
2012年7月から8月にかけて北海道で起きた、浅漬けによるO157食中毒では前年のユッケ事件を上回る8名が死亡する惨事となった。その後、保健所の調査では「消毒前後の作業エリアの区分がなく、各工程で汚染があった」こと、「塩素濃度を測定せずに消毒していたため、塩素濃度が不十分だった」こと、「容器の消毒が不十分で、菌が残った」ことなどが原因として挙げられた。
再現試験では原料野菜や製品からO157は検出されなかったが、人に感染しても、症状が出るのは小さな子どもやお年寄りが中心。健康な成人の多くは一時的な保菌者となりうる。つまり最終的に「加熱」しない限り、O157に代表される腸管出血性大腸菌に汚染されているリスクをゼロにするのは難しい。
2014年7月、静岡の花火大会で売られた冷やしきゅうりを原因とする、O157食中毒も最終的な汚染経路は特定できなかった。500人以上の被害者を出した大規模食中毒だったが、静岡市の調査では、仕込みに使う調理用具からは検出されなかった。可能性としては仕入れたきゅうりに菌がついていたか、作業者が保菌していたか──。
当日の静岡の最高気温は32.1℃。気温30℃という環境下では、菌は20~30分で倍増する。この業者は駐車場に停めた車中で作業した際に、菌が増殖した可能性が指摘されている。
腸管出血性大腸菌をはじめとする食中毒菌への対策は、食中毒菌を付着させない「分離」と調理器具などの「洗浄」、万が一付着しても菌を増殖させない「冷却」、そして菌を死滅させる「加熱」が基本的な対策となる。ただし、いったん加熱しても時間が経つと毒素が産生される菌もあるので万全の注意を払いたい。