医師不足による医療格差といえば、人口減少に悩む地方全体の問題と考えがちだ。しかし、現実は異なる。人口あたりの医師数を都道府県ごとに比較すると、圧倒的な「西高東低」となっているのだ。『日本の医療格差は9倍』(光文社新書)の著書がある上昌広氏によると、それは戊辰戦争の結果であるという。
* * *
現在、日本では医師不足による深刻な問題が起きている。救急搬送の受け入れ拒否による患者の死亡や、病院や診療科の閉鎖などの事例は枚挙に暇がない。その最たる原因と考えられるのが医師の「偏在」だ。
厚労省【『平成26年医師・歯科医師・薬剤師調査』】によると、人口10万人あたり医師数が最も多いのが京都府で307.9人、次いで東京都304.5人、徳島県303.3人となっている(全国平均は233.6人)。
一方、ワーストは埼玉県の152.8人。上位3都府県とは約2倍の開きがある。埼玉に次いで少ないのが茨城県の169.6人。その他、千葉県、新潟県、福島県、青森県と関東・東北各県が下位に続く。人口あたりで見ると、医師は「東京一極集中」などではなく、圧倒的な「西高東低」となっている。
医師数の「西高東低」は、人口あたりの医学部数と相関関係にある。このことは、医学部卒業生が出身大学の近郊で就職する傾向を示しており、医師は「地産地消」であることがわかる。つまり、医学部数も「西高東低」である。ではなぜ、西日本に医学部が多いのか。それは、約150年前の戊辰戦争の影響である。