虎の子の半導体メモリー子会社を売却し、会社の存亡をかける意志を示している東芝。だが、売却先候補との交渉は遅々としてまとまらないまま、すでに半年が経過──。いよいよ崖っ縁に立たされている。
「半導体事業で東芝と協業する米ウエスタンデジタル(WD)が業界他社への売却に反対して訴訟合戦になったり、技術の海外流出を懸念した政府(経済産業省)が水面下で介入したりして、交渉をややこしくしているのは事実。
とはいえ、東芝側もリーダーシップより“話し合い”を重んじる綱川(智)社長が、周囲に注文をつけられるたびに右往左往するなど、あまりの優柔不断ぶりに取引先の大手銀行も痺れを切らしている」(全国紙記者)
原発事業で巨額の債務超過に陥り、もはや死に体ともいえる東芝の中で唯一安定した収益と高い競争力を持つ半導体事業だけに、その売却を巡って様々な思惑が交錯しているのは理解できる。しかし、いつまでも東芝首脳陣が自ら意思決定をしなければ、決まるものも決まらない。
現在、東芝が有力な売却先として交渉しているのは3陣営だ。
今年6月に優先交渉先に選定したのは、米系投資ファンドのベイン・キャピタルと韓国のメモリー大手、SKハイニックス、それに国内政府系ファンドの産業革新機構、日本政策投資銀行を加えた「日米韓連合」だった。
ところが、前述のWDとの対立が泥沼化したことで交渉はストップ。そこで、まさかのどんでん返しともいえるWDとの和解を含めた「新日米連合」との交渉案が浮上。WDを中心に、米ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)、革新機構、政策投資銀行のグループが結成され、およそ2兆円の買収資金が提示された。
ここが引受先となれば訴訟リスクの心配もなくなるため、本命と見られていたが、今度はWDの出資比率をめぐって東芝側と主導権争いになり、やはり最終決定には至らず。8月31日に開かれた東芝の取締役会でも、目指していた8月中の売却先選定と契約締結は見送られることになった。
こうした東芝の動きに他陣営もまだ諦めてはいない。日米韓連合はなんと米アップルも参加させる新たな買収案を提示。そのほか、シャープを買収した台湾の鴻海精密工業がソフトバンクや米グーグルなどと連携して買収を画策している模様だ。
果たして、どの陣営が半導体事業を手中に収めるのか。