政府が年金の支給開始年齢を75歳に引き上げようと検討している。「生涯現役」などのスローガンで高齢者を働かせて社会保障費も負担させようという目論見だ。
「働かせて、負担させる」というやり口は介護を巡っても同じだ。とりわけ、介護を巡る問題の場合、負担増が家族の在り方まで変えてしまいかねない。介護施設情報誌『あいらいふ』の佐藤恒伯編集長が警鐘を鳴らす。
「来年8月から、現役世代並みの所得がある高齢者が介護保険サービスを利用した場合、自己負担の割合が2割から3割に引き上げられることが決まっています。3割負担になるのは介護保険を受給している人の3%程度ですが、徐々に対象を拡大していくのではないでしょうか。現在は40歳からとなっている介護保険料の支払い開始年齢についても、引き下げられる可能性はある」
そうしたなかで想定されるのが、「世帯分離」の増加だという。佐藤氏が続ける。
「たとえば、親夫婦と息子夫婦が一緒に生活している場合、世帯収入を圧縮するために、親夫婦と息子夫婦の世帯を分割する。そうすると介護保険の自己負担が少なく設定できたりするケースがある。“どうやればいいのか”と相談を受けることもよくあります」
ただ、そうした“対策”も、徐々に国による網を掛けられていくことになる。たとえば夫が働いていて妻が介護施設に入居しなければならなくなった場合に、以前は世帯分離をすれば妻が低所得者扱いとなり、利用者負担が一定程度に抑えられていた。