ライフ

世界各国の安楽死を選んだ人々を取材して思ったこと

安楽死前日に、夫の写真を眺めるイギリス人患者・サンドラ

 2016年1月から取材をはじめた国際情報誌・SAPIO連載「私、死んでもいいですか 世界『安楽死』を巡る旅」も遂に最終回を迎える。スイス、オランダ、ベルギー、アメリカ、スペインを経て、日本。国が変われば、価値観も変わる。筆者に強い影響を及ぼした言葉を振り返りつつ、「人間の最期」のあり方について、ジャーナリスト・宮下洋一氏が思いを綴った。

 * * *
 私の手元にあるボイスレコーダーには、多くの帰らぬ人たちの肉声が生き続けている。

 老いていくことを不幸だと感じていた英国人老婦・ドリス(享年81)は、スイスで自殺幇助を受けて、わずか20秒で息を引き取った。死の前日の老婦の強烈な言葉が、忘れられない。

「これからは、頂点に達した人生が衰退に向かうだけです。せっかく良き人生だったものが、身体の衰弱によって失われる。それだけは避けたいの……」

 スウェーデンから、スイスにやってきた元産婦人科医で、末期の膵臓癌だった女性・ブンヌ(享年68)は、ホテルの一室で、無意味に生き続けることの虚しさについて、こう嘆いた。

「なぜ、あと2か月も耐え難い痛みを我慢して生きなければならないのですか。耐え抜くことによる報酬でもあるのかしら」

 安楽死の衝撃にいささか慣れた3度目の現場では、まだ生きる力を残しているように見える、多発性硬化症患者・サンドラ(享年68)を看取った。死の直前、「ありがとう、ヨーイチ」といいながら見せた笑顔は、鮮明に覚えている。取材を重ねるうち、当初、安楽死に疑念を抱いていた私の死生観は、覆されていった。

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン