かたや、実は美人妻との夜の生活がうまくいっていない松井の現状が、愛妻デズデモーナの不倫を疑うオセローと重なるのも面白い。松井もオセローもかなり年下の妻を持ち、迫りくる老いに不安を感じている。そして松井は言う。

〈オセローは若くて美人の妻が好きで好きでしょうがないんだよ。だから嫉妬に目がくらんでしまった〉〈ここ見てくれよ。オセローが、デズデモーナを戦場に連れて行きたい理由を語る台詞〉〈『さかりのついた若い血はもう涸れ果てました』〉〈オセローは、実は、デズデモーナを満足させてなかったんじゃないのか〉

「『オセロー』を選んだのは話の構造が単純で5人でも演じられそうだったからで、実は私自身、『オセロー』がこんなに普遍的な話だとは、思ってもみなかったんです。

 例えば松井がEDである自分に重ねて「オセローED説」を唱えたり、ストーカーに襲われたことのある小柳が〈愛する人が自分から離れていく不安や恐怖〉をオセローも持っていると気づくのは私自身の発見でもあって、人によって何通りにも読み解けるのがシェイクスピアの懐の深さかもしれない。

 他にも、出世できなくてイアーゴーが忠誠心をこじらせたり、妻の言葉を聞こうともしない男たちがしっぺ返しを食ったり、本当に人間のやることって400年前も今も変わらないんです」

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