国内

西郷隆盛が現代日本人に問う「文明とは何ぞや」

西南戦争は西郷にとって立たねばならぬ戦だった〈鹿児島城山之図 楊洲斎周延〉 首藤光一/AFLO

 明治維新から150年。いまこそ日本には、西郷隆盛の魂が必要とされている。文芸評論家の富岡幸一郎氏がその精神について解説する。

 * * *
 日本人にとって非常に強い存在としてあり続ける西郷隆盛には、さまざまな側面がある。まずは維新を成し遂げた中心人物という面。内村鑑三が著書『代表的日本人』で〈ある意味で、1868年の日本の維新革命は、西郷の革命であった〉と評したように、西郷なくして維新はなかった。歴史的大転換の主導的人物であり、武人、そして政治的策謀も含めたマキャベリストとしての西郷である。

 他方で、文明開化に対して疑問を抱き続け、大久保利通ら開化派と対極に位置した反開化主義者としての顔もある。

 とはいえ西郷は開明的でもあった。新国家建設にあたり、西洋の各国を知る必要性を認識し、西洋文明にも目を向けている。さらに福澤諭吉の『文明論之概略』(*注)を高く評価していた。

【*注/明治8年(1875年)刊行。文明についてさまざまな角度から論じ、西洋よりも日本のほうが劣っているとした。西洋列強に日本が植民地化されることを危惧していた福澤は、独立を守るためには徳ばかりを重んじるのではなく、知識の習得が必要だと訴えた】

 ひとつの像におさまりきらないこの英雄にいまも多くの日本人が魅了されるのは、現代において西郷の精神が必要とされているからではないか。西郷の精神とはいかなるものか。特筆すべきは、西南戦争に臨んで西郷が示した文明観である。挙兵にあたり、西郷は陸軍大将の名で文書を県令・大山綱良宛に送る。

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《ベイビーが誕生した大谷翔平・真美子さんの“癒しの場所”が…》ハワイの25億円リゾート別荘が早くも“観光地化”する危機
NEWSポストセブン
公然わいせつで摘発された大阪のストリップ「東洋ショー劇場」が営業再開(右・Instagramより)
《大阪万博・浄化作戦の裏で…》摘発されたストリップ「天満東洋ショー劇場」が“はいてないように見えるパンツ”で対策 地元は「ストリップは芸術。『劇場を守る会』結成」
NEWSポストセブン
なんだかんだ言って「透明感」がある女優たち
沢尻エリカ、安達祐実、鈴木保奈美、そして広末涼子…いろいろなことがあっても、なんだかんだ言って「透明感」がある女優たち
女性セブン
同僚に薬物を持ったとして元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告が逮捕された(時事通信フォト/HPより(現在は削除済み)
同僚アナに薬を盛った沖縄の大坪彩織元アナ(24)の“執念深い犯行” 地元メディア関係者が「“ちむひじるぅ(冷たい)”なん じゃないか」と呟いたワケ《傷害罪で起訴》
NEWSポストセブン
過去の大谷翔平のバッティングデータを分析(時事通信フォト)
《ホームランは出ているけど…》大谷翔平のバッティングデータから浮かび上がる不安要素 「打球速度の減速」は“長尺バット”の影響か
週刊ポスト
電動キックボードの違反を取り締まる警察官(時事通信フォト)
《電動キックボード普及でルール違反が横行》都内の路線バス運転手が”加害者となる恐怖”を告白「渋滞をすり抜け、”バスに当て逃げ”なんて日常的に起きている」
NEWSポストセブン
16日の早朝に処分保留で釈放された広末涼子
《逮捕に感謝の声も出る》広末涼子は看護師に“蹴り”などの暴力 いま医療現場で増えている「ペイハラ」の深刻実態「酒飲んで大暴れ」「治療費踏み倒し」も
NEWSポストセブン
初めて沖縄を訪問される愛子さま(2025年3月、神奈川・横浜市。撮影/JMPA)
【愛子さま、6月に初めての沖縄訪問】両陛下と宿泊を伴う公務での地方訪問は初 上皇ご夫妻が大事にされた“沖縄へ寄り添う姿勢”を令和に継承 
女性セブン
中村七之助の熱愛が発覚
《結婚願望ナシの中村七之助がゴールイン》ナンバーワン元芸妓との入籍を決断した背景に“実母の終活”
NEWSポストセブン
松永拓也さん、真菜さん、莉子ちゃん。家族3人が笑顔で過ごしていた日々は戻らない。
【七回忌インタビュー】池袋暴走事故遺族・松永拓也さん。「3人で住んでいた部屋を改装し一歩ずつ」事故から6年経った現在地
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で天皇皇后両陛下を出迎えた女優の藤原紀香(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
《天皇皇后両陛下を出迎え》藤原紀香、万博での白ワイドパンツ&着物スタイルで見せた「梨園の妻」としての凜とした姿 
NEWSポストセブン
“極度の肥満”であるマイケル・タンジ死刑囚のが執行された(米フロリダ州矯正局HPより)
《肥満を理由に死刑執行停止を要求》「骨付き豚肉、ベーコン、アイス…」ついに執行されたマイケル・タンジ死刑囚の“最期の晩餐”と“今際のことば”【米国で進む執行】
NEWSポストセブン