いま、プロ野球12球団を見渡しても「打てる捕手」はいない。そのなかで彗星の如く現われた広陵高校・中村奨成(18)にファンの期待が集まるのは当然だろう。
「甲子園でキャッチャーのヒーロー……たしかに記憶にないね」
現役時代は球史唯一の三冠王捕手(1965年)にして、指導者として古田敦也らを育て上げた野村克也氏(82)の声も、どこか期待混じりに聞こえる。ノムさんの目に、中村はどう映るのか──。
すでにプロ志望届を出すと表明している中村。野村氏が厳しくも温かい言葉を送るのは、その決断が“キャッチャーは高校卒業してすぐにプロ入りすべき”という持論と符合しているからだろう。
「18~22歳は野球についての考え方が最も影響を受ける時期。大学や社会人に進むと、一回負けたら終わりのトーナメント用の無難な配球ばかり覚えてしまう。そういう間違った野球を教えられると、悪い癖を直すのにプロの指導者が苦労する。申し訳ないが、オレは高卒以外のキャッチャーは信用していないよ」
名捕手といわれてきた選手のなかでは森祇晶(巨人)、岡村浩二(阪急ほか)、谷繁元信(横浜ほか)らが高卒プロ入りしている。野村氏もそうだ。