「中国では日本に旅行中に大地震が起きることを心配している人が多いのに、この防災サイトはあまりに不親切です」
中国人ジャーナリストの周来友氏がそう呆れるのは、8月24日に国土交通省が開設した〈2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催に向けた首都直下地震対策ポータルサイト〉だ。
〈海外や国内に対し、適切な情報発信を行うことが重要〉として、国交省や各関係機関の防災情報提供ツールを一元化したサイトで、「4か国語に対応」(日本語、英語、中文〈簡体・繁体〉、韓国語)と多言語化を謳っている。五輪期間中は1000万人近い来日観光客が見込まれるなか、防災情報の拡充に乗り出したわけだ。
ところが、肝心の多言語化は何ともお粗末なのだ。海外のIT事情に詳しいジャーナリストの上田裕資氏は言う。
「同サイトは、『グーグル翻訳』という機械翻訳を使っていて、自前の翻訳文は作っていない。このグーグル翻訳は課題も多く、“直訳”して意味が通じなくなってしまうことがあるのです」
たとえば、サイトには「今から知っておくべき情報」として内閣府の啓発サイト「津波防災ひろめ隊」が紹介されている。上田氏の指摘。
「英語では『Tsunami spread Corps site』と表示される。これでは『津波拡散部隊サイト』という意味になり、津波を拡散させるのを目的とした“部隊”のサイトと受け取られてしまいます。“ひろめ隊”が“広めたい”にかけた駄洒落であることは機械翻訳では理解できないわけです」