汚れた慰霊碑の周りに、崩れた墓石が散乱している。
雑草は伸び放題で、盛り土のようにうずたかく積もるゴミの山。
《大切な家族が眠っています。どうか掘り返さないで》
《墓石だけでも返して》
《この子達の引取先を探して下さい》
かつて各家の墓地のあった区画には、遺族の悲痛な声が綴られたメッセージカードが掲げられている。ここは大阪府内のペット霊園『A』の跡地。1991年の創業以来、ペットの火葬から納骨、葬儀までを担っていた同社だが、今年1月に突如閉園。半年以上放置された結果、かような有様になった。
「とんでもない話よ。閉園後は全部置きっぱなしやし。それでも仏さんに手ぇ合わせにくる飼い主が絶えない。毎週来る人もいる。みんな悲しみのどん底やわ」(近隣住人)
昨今のペットブームに伴い、ペットの火葬業者が増加の一途をたどっている。全国ペット霊園協会理事の伊東正和さんが語る。
「3年ほど前にわれわれが調べたところ、全国に1000ほどのペット火葬業者がありました。20年ほど前から増え始め、ここ10年で急増しました」
人間の火葬や埋葬に関しては『墓地・埋葬に関する法律』で規定されているが、動物の火葬場に関しては法律がなく、監督官庁もない。
「自治体によっては、『半径100m以内に民家がないこと』等の基準を設けていますが、基本的には誰でも開業可能です」(伊東さん)
結果、ペット火葬場が全国各地に続々とできたわけだが、それに伴い、業者と利用者の間でトラブルも続出している。冒頭のケースはその一例で、あるペット火葬業者によれば、「倫理観の低い業者は多数ある」と指摘する。