政府は国と自治体合わせて約330万人いる公務員に「65歳完全定年制」を導入する方針を打ち出した。理由を聞いて耳を疑った。「一億総活躍社会で公務員に働きがいを感じてもらうために、再雇用ではなく定年を65歳に延長する」というのだ。
悪い冗談だろう。第一、安倍晋三首相は「“民間活力の爆発”。これが成長戦略のキーワードだ」と語っていたはずで、“公務員の活力”を爆発させて成長の原動力にするなど聞いたことがない。
だが、ジョークではなかった。自民党「一億総活躍推進本部」の提言(今年5月)にはこう書かれている。
〈現行、公務員の定年は60歳であり、(雇用継続は)定年後比較的軽易な業務に従事させる再任用によってなされている。しかし、一億総活躍の趣旨にかんがみると、モチベーションの低下を招きやすい再任用より、働く意欲のある職員のためにも最後まで「勤め上げる」定年引上げを推進すべきである〉
理由がこう続く。
〈かつて完全週休二日制が公務員主導で社会に定着していったように、公務員の定年引上げが民間の取組を先導し、我が国全体の一億総活躍社会をけん引することも期待される〉
公務員を65歳定年にすれば、民間企業も“右にならう”という論理だ。「そんなことあるわけない」と都内で町工場を営む社長は一笑に付したが、目は笑っていない。