世界で一年に1000万台以上も自動車を販売するトヨタグループといえども、自動車業界の未来を考えた場合、安泰とは言いがたい。欧米で急速に進んでいる環境規制が他国にも広がる気配をみせるなか、EV(電気自動車)などの共同開発で遅れをとっているからだ。近著『武器としての経済学』が話題となっている経営コンサルタントの大前研一氏が、日本の自動車メーカーの未来について考察した。
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トヨタ自動車とマツダがEV(電気自動車)などの共同開発に向け、資本提携すると発表した。報道によれば、提携会見でトヨタの豊田章男社長とマツダの小飼雅道社長は「未来のクルマをコモディティ(汎用品)にはしたくない」と共通の思いを語ったという。だが、この提携はEV開発で後れを取っていると感じている2社の焦りを象徴するものだと思う。
そもそも日本の自動車メーカーは今、三つの大きな課題を抱えている。一つ目は、カーシェアリングのさらなる普及。二つ目は、ガソリン車・ディーゼル車からEVへの移行。そして三つ目は「自動運転」だ。
こうした喫緊の課題に対し、いち早く対応しているのは欧米メーカーだ。たとえば、スウェーデンのボルボは2019年以降、新モデルの全車種をEVやHV(ハイブリッド車)にすると発表している。
また、一時トヨタと提携しながら袂を分かったアメリカのEVメーカーのテスラは、すでに完全自動運転機能付きEVの「モデルS」「モデルX」を発表。さらに今年7月から3万5000ドルという手頃な価格の「モデル3」を販売開始した(日本での納車は2019年以降)。「モデル3」の事前予約は50万台を突破し、テスラの時価総額はGM(ゼネラルモーターズ)、フォードを超えている。