クルマの電動化や環境規制強化の高まりにより、軽油燃料で走るディーゼル車を廃止しようという動きが広がっている。国内でもホンダやSUBARU(スバル)が主に欧州で販売しているディーゼル車の販売縮小や撤退方針を打ち出している。果たして、ディーゼル車の使命は完全に終わったのか。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏がレポートする。
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およそ2年前、フォルクスワーゲンの排出ガス不正が露見してからというもの、ディーゼルバッシングは止まる気配がない。そればかりか、憎悪の対象は内燃機関全般に飛び火し、フランスのニコラ・ユロ環境相が2040年に内燃機関を終了させるという、現時点では実現可能性を想定しがたい目標を打ち出したほどだ。
ディーゼル問題にいちばんナーバスになっているのは、ディーゼル車販売の絶対数が少ないアメリカではなく、今や本拠地の欧州だ。ドイツでは8月、乗用車市場におけるディーゼル車の比率が4割を下回った。これについて日系自動車メーカーの欧州担当者は次のように事情を説明する。
「ドイツの一般ユーザーがディーゼルを嫌っているわけではない。ディーゼルが減った理由はいくつかあるが、一番影響が大きいのは、複数の大都市がディーゼル車進入禁止という規定を設けるのではないかということが懸念されていること。
もしこれが実施されたらクルマの利便性が完全に損なわれるので、さすがにディーゼル車買い控えに直結する。また、企業が従業員に貸し出すカンパニーカーでディーゼルが減っているのもある程度影響しているかもしれない」
大都市圏への進入禁止はディーゼル車ユーザーにとって死活問題だ。排ガスを理由とした進入制限は今までも実績がある。
たとえばフランクフルトではずいぶん前に、ユーロ4という排ガス基準をクリアしていないクルマは進入禁止という規制が実施された。フランクフルト市街に入るには単にクルマがユーロ4を満たしているだけではダメで、ガソリンスタンドなどでユーロ4以上であることを示すステッカーを買ってウインドウに貼り付けないと罰金を取られる。
ディーゼル車全体を進入禁止にするというのは社会に大きな影響を及ぼすが、そういう規則の運用に慣れた国だからこそ、実際にやりかねないという疑念をユーザーが抱くのは自然なことだ。
自動車業界は“ディーゼルスキャンダル”を収束させようと、排ガスの浄化レベルを上げる対策を販売済みのクルマに施すということで手打ちを狙っているが、環境団体は浄化装置が低温環境では作動しないことが許されているなど問題は残ったままだと批判を続けており、先行きは不透明だ。
が、ここで疑問が起こる。ディーゼルは本当に未来がないのか。