「この道しかないんです」──消費増税を延期し、景気回復を加速させると国民に信を問うた2014年総選挙で、安倍晋三首相は高らかにそう宣言した。
政権公約には「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」、そして「女性活躍」「地方創生」などのフレーズが並んでいた。
この総選挙で、自民党は歴史的圧勝を収める。安倍首相は“選挙に負けない総理”として、「大胆な」経済政策の数々を進めてきた。
たしかに、総額400兆円を超える日銀の国債買い取りという文字通り「異次元」の金融緩和をはじめ、是非はともかく、かつてこの国の政権が挑んだことがない劇薬政策ばかりだったことは間違いない。
ところが、である。その「道」の途中で、安倍政権が立ち往生しようとしている。森友・加計学園スキャンダルで支持率は急降下し、確実視されていた来年9月の党総裁選で3選を果たすというシナリオも、もはや現実味はない。
「ポスト安倍の有力候補とみられている岸田文雄・政調会長や石破茂・元幹事長は、格差拡大や大規模金融緩和の長期化への懸念を公然と口にしている。これまでの安倍総理の強引な経済政策は、選挙の強さをテコに反対派を黙らせる力があってこそできたことだったが、もはや神通力は切れた。この政策を続けていく力は残っていない」(自民党非主流派議員)