「あっ、プロ野球ってすごいな」──今季前半、野茂英雄(元近鉄)を上回る8試合連続二桁奪三振という大記録を打ち立てた最中、東北楽天ゴールデンイーグルスの則本昂大(26)は新たな感覚に包まれていた。
とりわけ特別なマウンドに感じたのは、6月15日のヤクルト戦だ。7回を投げて8三振と連続二桁奪三振の記録が途切れ、6失点で9試合ぶりの黒星。「情けない試合だった」と振り返るが、同時に今までにない感覚を味わった。
「楽天ファンだけでなく、相手チームのファンも僕が三振をとると沸き上がってくれました。特に今年は三振をとるだけで、球場全体が自分たちの味方になってくれるような雰囲気を作ってくれたので、『三振ってこういう魅力もあるんだな』って感じましたね」(則本。以下同)
則本はプロ入り2年目の2014年から3年連続でリーグ最多奪三振をマーク。そして今季、「ドクターK」の異名をとった野茂の記録を上回り、プロ野球史に自身の名を刻み込んだ。
なぜ、則本はこれほど三振を奪うことができるのだろうか。150キロを超えるストレート、鋭く変化するフォークとスライダー、そしてそれらを自在に操る制球力。技術的に言えばそうなるが、内面の答えに迫ると、この右腕投手の「希少価値」が見えてくる。
「ゴロもフライも三振もアウトの一つで、27個アウトをとれば野球は終わります。でも、三振はリスクが一番少ない。そのために球数が必要なら、別に投げればいいという考えです」