解散・総選挙が近づいている。民進党の新しい代表に選ばれた前原誠司氏は代表選の中で「次期衆院選で政権交代を目指す」と述べた。しかし、近著『武器としての経済学』が話題になっている経営コンサルタントの大前研一氏は、この目標自体が大間違いであり、手強い“健全野党”を目指すべきだと指摘している。大前氏が、民進党の未来を展望する。
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民進党が本来、自民党に対してぶつけるべきは「国家運営の仕掛け」を根本から変える論議のはずである。
なぜ日本は“変われない国”になったのか? その最大の原因は1994年の「小選挙区制」導入であり、それを主導した小沢一郎自由党代表(元・民主党代表)の大罪だと私は考えている。
当時のマスコミは、ジャーナリストの田原総一朗氏やニュースキャスターの筑紫哲也氏らが旗振り役となり、定数2人以上の中選挙区制から定数1人の小選挙区制に移行して政権交代が可能な二大政党制を実現しなければならない、と主張していた。それに賛成すれば「改革派」とされ、反対した私などは「守旧派」というレッテルを貼られた。だが実際、細川護煕内閣への政権交代は中選挙区制のまま実現している。
では、小選挙区制が導入された結果、何が起きたか? 風が吹くと一気にブームが巻き起こるため、政治が非常に不安定になるとともに、「○○チルドレン」というド素人が多数当選し、スキャンダルを連発して税金の無駄遣いを重ねている。
また、中選挙区制では加藤紘一氏や近藤鉄雄氏、愛知和男氏といった天下国家や外交を論じる政治家が登場して議席を維持することができたが、小選挙区制になってからは次の選挙で当選することしか眼中になく、「おらが村」に予算を引っ張ってくるだけの小粒な“運び屋”ばかりになってしまった。