先発投手が約100球をメドに交代する時代、楽天・則本昂大は逆行するように120、130球と投げ続ける。8月26日の日本ハム戦は144球で完投した。
昭和のエースのように最後まで投げ抜く体力と根性に加え、マウンドでの振る舞いも昔気質だ。打者に心理状態を悟られないようポーカーフェイスを貫く投手が多くなった中、則本は鬼気迫る表情から渾身のガッツポーズを作り、雄叫びをあげ、打たれればマウンドを蹴り上げ悔しさを露わにする。今やこれほど表情豊かな投手は数少ない。
「どっちかというと短気なので、物に当たってしまうときがあります。『この試合を勝たなければいけない』というときにはどうしても気持ちを抑えられないことが出てくるけど、本当は無くしたいと思っています」
◆力と力の戦いに憧れた少年時代。勝敗以外でもファンを魅了したい
分業制が確立された現代のプロ野球では、本格派の先発投手は珍しくなった。則本がそうしたタイプになったルーツは少年時代にさかのぼる。
「負けず嫌いとか、強いチームを倒したい気持ちは小学校からずっとありました。休みを捨てて野球に専念してきたから、誰にも負けたくない気持ちが強い。言葉は悪いですけど、人が遊んでいるときに自分が努力したことが今、プロでこうやって実になっている。そこは昔の自分を褒めてやりたいです」