「死んだら、代々の先祖が眠る墓に入るのが当たり前」と考えられていた時代も終わろうとしている──。継承者の不在、墓の管理・墓参りの負担、さまざまな理由から「墓の片づけ」をする人が増えている。
とはいえ、“墓じまい“をするのはそう簡単なことではない。大阪府に住む松田孝子さん(仮名・70才)を例に、墓じまいの裏側をレポートする。
◆夫はすでに死去、子供はいない
「“墓じまい”を終えて、胸に抱いていた不安がすっと消えていきました。新しいお墓は家から1時間もかかりません。すごく行きやすくて、駅から無料送迎バスも出ているんですよ」
維持できないお墓を撤去し、遺骨を整理する“墓じまい”。今年9月上旬に墓の撤去工事を終えたばかりの松田さんは、すがすがしい様子で話す。墓じまいを考えたのは、家から電車で2時間かかる夫の墓に、通い続けられないと感じたからだった。
「年齢を重ねるとともに、お墓参りをする精神的、体力的な負担が重くなってきました。往復にかかる時間は4時間、お花を買って、お墓の掃除をして、周りの雑草を抜いて、と細々作業していると2時間はかかります。翌日は足も腰も痛くなっちゃって。月に1度は行くようにしていたのですが、それでも花立の水がヌルヌルになってしまうのが気がかりで、1年前にとうとう造花に変えました」
いつまで墓を守り続けられるのか──。古希を迎え終活を意識した松田さんは、“自分でできるうちにやろう”と、墓じまいを実行した。
夫は17年前に亡くなった。夫のきょうだいは全員亡くなっていて、墓に入っていたのは末っ子だった夫のみ。墓じまいにあたり親族トラブルはなかった。
「それでも事前にきちんと相談はしました。夫のきょうだいの子供たちは『いいことだよ』って賛成してくれました。親族トラブルが多いと聞くので、それは幸運でした」
◆いちばん気を使った「寺への申し出」