過酷な労働環境が社会問題化している。よく知られているのは、心身の限界を超える分量の仕事によって、ときに死亡者も出たブラック企業問題だ。近年では、過剰なノルマやシフト、報酬が支払われないなども問題を抱えたブラックバイト問題が浮上した。そして今年、大学生などを対象にしたインターンシップでも同様の問題が表沙汰になった。まだ世間に広く知られていないが、若者の意識の高さにつけこむ貪欲なブラック経営者によって、無給の営業マンが生み出されている実態を、ライターの森鷹久氏が追った。
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岩手県内の農業法人が、インターンシップとして集めた女子大生二人にアルバイト業務をさせたにもかかわらず、賃金のほとんどを支払わなかったとして、労働基準監督署から是正勧告を受けた。
大学生のインターンシップ参加は、外資系企業が東京大学や京都大学など特定の大学の学生を対象に始まったが、2000年代以降になると参加企業が増え、最近では、プレ就職活動のような位置づけにもなっている。大学3年生の夏にはインターンシップに参加するのが常識となりつつあるのだが、このインターンシップですらブラックな労働にすり替えられているというのだ。
日本国内の企業が、東南アジアなどの新興国の若者を「研修」として呼び寄せ、極めて低い賃金の「労働力」としてこき使う例も知られているが、日本国内にはさらに非道な「ブラック経営者」が存在すると、現在は都内の会計事務所に勤務する佐野さん(仮名・28歳)は訴える。
「アメリカのビジネスだとか、高い意識がどうのとか、ありもしないこと並べ立てて……。ガラクタや出来損ないの果物を売っているだけのクソッタレ業者のクセに、俺たちの夢まで食い物にして……。許せません。外国人研修生など、違法に働かされている方々のニュースを見る度に思い出します」
渋谷や新宿など、都内のターミナル駅前で果物を販売する若者達を見たことはないだろうか? お世辞にもきれいとは言えない出で立ちで、キャリーケースを引きながら道行く人々に「三個で千円」などといったバカ高いリンゴやミカンなどを売り歩く若者だ。彼らの実態については、一部メディアでも報じられ「やる気の搾取」などとも指摘されているが、佐野さんは彼らが”所属”する会社で果物売りや営業、最終的には経理担当も経験したという。
「無料求人誌に”日給一万円保証”や”即日払い”と謳って募集を出す。応募してきた人たちは、まず翌日や翌々日などできるだけ早い段階で”研修”を受けさせる。そこで8割、いや9割5分がいなくなる。残った人たちは…、ちょっと世の中のことを知らなさすぎるというか、被害者には変わりないのですが……」
こういった求人に応募してくるのは、十中八九が金のない若者だ。出来るだけ早く現金が欲しい、そういった若者をターゲットにしているからこそ”一万円”や”即金”の文言が求人誌に並ぶ。9割5分がいなくなる研修とは、そこまで血も涙もない、きつくつらい研修なのか?