中国共産党最高指導部内の権力闘争に巻き込まれた大富豪と、党中央の相次ぐ告発合戦が泥沼化している。
大富豪側は、習近平国家主席の最側近で最も信頼が厚いといわれる王岐山党中央規律検査委書記(党政治局常務委員)の女性関係や親族の不正蓄財疑惑を告発。一方の指導部側は、すでに国外脱出し米ニューヨークに逃亡している大富豪を汚職などで国際手配したほか、新たに元従業員女性をレイプした容疑でニューヨーク地検に告訴、賠償金1億4000万ドルを求める裁判が開催されるなど、レイプスキャンダルに発展しており、今後の展開はまったくの五里霧中で混迷の様相を呈している。
中国国営新華社通信や米国を拠点にする中国問題専門の華字ニュースサイト「博聞新聞網」、香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」などの報道を総合すると、次のようになる。
この大富豪は郭文貴氏で、1967年に山東省で生まれた。中学校卒業後、河南省鄭州市に移り住み、国有企業職員を経て、1993年に不動産会社を興し会長に就任した。そこで大成功をおさめ、2014年には中国で発表される「胡潤百富榜」(フーゲワーフ長者番付)で74位にランク。個人資産額は155億元(約2550億円)と伝えられた。
ところが、郭氏の政治的な後ろ盾だったとされる馬建・国家安全省次官が2015年1月、党紀律違反の疑いで失脚したことから捜査の手が郭氏に伸びてきたことで、郭氏は香港経由で国外脱出。いまはニューヨークを拠点としているが、馬氏からの情報だとしたうえで、党最高幹部のひとりで謹厳実直なイメージで反腐敗運動を率いる王岐山氏が実は私腹を肥やしており、複数の隠し子がおり、莫大な資産を秘匿しているなどと次々と暴露を始めたのだ。