相撲ブームが沸騰している。「謎のスー女」こと相撲女子の尾崎しのぶ氏が、現在相撲コラムを週刊ポストで執筆中。今回は、九月場所の異常事態について尾崎氏が綴る。
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九月場所初日の相撲をテレビで見ていて、「石浦強えー!」とうなった。横綱白鵬を送り出し。しかし間違いだった。時間は四時半で、横綱白鵬の取る時間ではない。それに石浦は白鵬が独立する際には連れて出る予定で入門している内弟子、宮城野部屋の所属なので取組が組まれることはない。石浦の対戦相手荒鷲が若き日の白鵬に見えてしまった。どうやら私は、白鵬が九月場所にいないことを飲み込めていないらしい。
稀勢の里と鶴竜の休場については、五月場所と七月場所も休場していることから九月場所もそうであろうと思っていた。だが「左大腿四頭筋腱炎、左足関節ATF損傷で白鵬も初日より休場」との発表には驚いてしまった。五月場所と七月場所で連続優勝していた白鵬だったから。三月場所の途中休場は、右足の親指と右大腿部の怪我によってだった。完治しないその右側をかばったしわ寄せで左側もおかしくなったということか。
記録に残る昭和以降で、三横綱が初日から不在になるのは初めてのこと。そんな異例の今場所、私はまだテレビでしか相撲を見たことのない友人を国技館にお連れすることになっている。
チケットを用意できたと伝えた八月の初め、稀勢の里を生で見られることを郷里の祖父母からうらやましがられていてしっかり記憶して伝えることが親孝行になる、とはしゃいでいた。それなのにさらに白鵬までいないなんて、と悲しがっている。いくつかの注目点を私なりにさがし「目をつぶる暇ないよ!」と息巻く。