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【書評】日航機墜落事故 陰謀説に崩れぬよう求めた事実

【書評】『日航123便 墜落の新事実 目撃証言から真相に迫る』/青山透子・著/河出書房新社/1600円+税

【評者】大塚英志(まんが原作者)

 web上に溢れる、いわゆる「陰謀説」の一つに日航123便墜落事故の「真相」が自衛隊による誘導弾の誤射が発端であり、「圧力隔壁説」はその「隠蔽」のために捏造された、という主張がある。

 航空機事故に限らず、大きな悲劇の背後に重大な事実が隠蔽されているというのは「陰謀説」の定形だが、本書はその種の陰謀説から慎重に距離をとりつつ、誤射説を含む自衛隊の関与や政府による隠蔽の可能性を示唆する。

 陰謀説に定番の陰謀機関の類は一切、登場せず、資料も怪文書ではなく、例えば事故機の様子を目撃した子供らの作文集だ。ぼくは陰謀説の類はフィクションの題材以外の何ものでもないという立場であるが、本書が暴こうとしているのが「壮大な陰謀」ではない点がむしろ気になる。

 仮に自衛隊の誤射があったとして、それは「陰謀」ではなく、いわば「公務員」の失態である。それを上層部や政府がその場しのぎで隠蔽しようとして誤った判断を繰り返していくという事態は、犠牲者の数を考えれば安易に比較すべきではないにしても、その種の隠蔽体質が事を無意味に大きくしていく様をここしばらくに限ってもうんざりするほど見聞しているではないか。

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