安倍晋三首相は、様々な経済政策をアピールしてきた。そのうちのひとつに「働き方改革」がある。新刊『武器としての経済学』を上梓したばかりの経営コンサルタントの大前研一氏によると、その「働き方改革」は現代における“働く”という意味をまったく理解していない政策だという。以下、大前氏が解説する。
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いっそやめてしまえばよいではないか──。政局がらみで先送りされそうな「働き方改革関連法案」のことである。
安倍政権の目玉政策を推進する同法案は、高収入の一部専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」の導入や裁量労働制の対象拡大、残業時間の上限規制などを一つに束ねたもので、政府は2019年4月の施行を目指すとされている。
これに対し、連合は「高プロに年間104日以上の休日取得を義務化する」などの修正内容を盛り込むことでいったん同法案を容認する姿勢を示しながら、傘下の労働組合が強く反対したため撤回している。
だが、すでに本連載で何度も指摘しているように、グローバル企業の経営や世界標準の働き方を知らない政治家や役人に「働き方改革」などできるはずがない。それは、政府案に的外れな反応を示す経団連や連合の幹部たちも同様だ。
そもそも仕事にはブルーカラーとホワイトカラーがあるが、日本企業の場合はブルーカラーの比率が大幅に低くなっている。作業の自動化やロボット化が進んだ上、今や多くのメーカーは外から買ったり外注したりした部品を組み立てているだけだからだ。