今回の“抜き打ち解散”で安倍晋三・首相に完全に出し抜かれたのは「選択肢なき投票」を迫られる全国の有権者に他ならない。
「国民の多くはこんな時期に党利党略だけの解散に踏み切る安倍首相に疑問と憤りを感じている。しかし、都議選の時のように有権者が安倍政治にNO、こんな解散にNOを突きつけたくても、野党が準備不足で投票先がない。抜き打ち解散の本当の狙いは政権に批判的な国民の参政権を封じ込めることであり、民主主義の原理に逆行する総選挙が行なわれようとしている」(政治ジャーナリスト・野上忠興氏)
だからといって有権者が「自民は嫌だが、投票先がない」と棄権し、投票率が大きく下がれば、それこそ安倍首相の思う壺だ。支持母体である創価学会の固い基礎票をもつ公明党と、その支援を受ける自民党の組織選挙が一層有利になってしまう。だが、怒れる有権者は諦めてはならない。
「国民から選択肢を奪うような選挙だからこそ『落選運動』で政権に痛打を与えることができる」
そう指摘するのは政治資金オンブズマン共同代表の上脇博之・神戸学院大学法学部教授だ。
「7月の都議選の最終日に秋葉原で応援演説に立った安倍首相に対し、『安倍ヤメロ!』コールが沸き起こり、通りすがりの人たちも一緒に口ずさんでどんどん広がっていきました。これが象徴的な落選運動です。この『安倍ヤメロ!』の大コールが多くの都民に反自民の思い、怒りを伝播させたと私は理解している。有権者は都民ファーストがいいからではなく、“自民党にだけは投票したくない”と考えて行動し、それが自民党の歴史的惨敗につながった。その手法は今回の選挙でも有効です」