葬儀費用の全国平均は約119万円(鎌倉新書「第2回お葬式に関する全国調査」)となっているが、近年は葬儀を近親者だけで済ませる「家族葬」や、通夜や告別式をせずに火葬場に直行し、僧侶に読経だけしてもらう「直葬」が急増している。葬儀・お墓コンサルタントの吉川美津子氏が解説する。
「家族葬といっても家族3~4人のみから、親類や友人を合わせて20~30人で行なうものまで幅広い。相場は地域によっても異なりますが、おおむね50万~150万円程度でしょう。家族葬は費用を抑えられるものの、会葬者が少なく受け取る香典が減るため、一般葬より持ち出しが多くなるリスクがある。直葬の場合は20万~30万円とより低価格になる」(吉川氏)
鎌倉新書の調査によれば、今や国内の全ての葬式の6分の1が直葬だという(「直葬への対応」に関する葬儀社アンケート調査)。
身寄りが不在だったり、生活保護受給者など経済的に困窮する高齢者の葬儀が増えていることが主な理由と見られているが、「一般的な家庭でも直葬を選択するケースは多くなっている」(葬儀場関係者)という。
近年は「火葬場渋滞」という新たな問題も“死後待遇”に関わってくる。都内在住の60代男性は、数年前、母親が亡くなった際の葬儀に直葬を選んだ。
「母の葬儀にかけるお金がなく、業者に直葬を頼みました。しかし火葬場が混み合っているということで、5日ほど母の遺体を自宅で安置することになった。最初は“ゆっくりお別れができていい”と思っていました。ところが業者がドライアイスをけちったためか、遺体に傷みが目立つようになってきて……。安い業者に頼んだばかりに母に申し訳ないことをしてしまったと悔やんでいます」