11月公開の映画『泥棒役者』。かつての仲間に脅されて豪邸に忍び込んだ元泥棒が、素性がバレないようさまざまな人物になりきるコメディだ。監督・脚本は朝ドラ『とと姉ちゃん』(NHK)を手がけた脚本家・西田征史。彼はもともとお笑いコンビ出身。元芸人だ。
ドラマ『カンナさーん!』(TBS系)の脚本を手がけたのは、お笑い芸人で俳優のマギー。2000年代に一世を風靡したコント集団「ジョビジョバ」のリーダーだ。
他にも、今年の『27時間テレビ』(フジテレビ系)の中で時代劇を手がけたバカリズムや、去年『映画クレヨン しんちゃん 爆睡!ユメミーワールド大突撃』の脚本を高橋渉監督と共同で手がけた劇団ひとりなど脚本家の芸人が増えている。その理由を探ってみたい。
◇時代を代表するスター脚本家の不在
9月までのドラマの脚本家を見てみると、例えば『ひよっこ』(NHK)は岡田惠和氏、『過保護のカホコ』(日本テレビ系)は遊川和彦氏、『ごめん、愛してる』(TBS系)は浅野妙子氏。さらに、10月から始まるドラマ『先に生まれただけの僕』(日本テレビ系)は福田靖氏、『トットちゃん!』(テレビ朝日系)は大石静氏。来年の大河ドラマ『西郷どん』(NHK)は中園ミホ氏と、いずれも人気ライターが並ぶ。
20年前、1997年のドラマの脚本家の顔ぶれを見てみると、岡田氏は『ビーチボーイズ』(フジテレビ系)、遊川氏は『智子と知子』(TBS系)、浅野氏は『ラブジェネレーション』(フジテレビ系)、福田氏は『名探偵保健室のオバさん』(テレビ朝日系)、大石氏は『ふたりっ子』(NHK)、中園氏は『不機嫌な果実』(TBS系)と、今と何ら変わっていない。つまりこれは下の世代が育っていないということではないだろうか。
ほか思い出すライターでいえば三谷幸喜氏や宮藤官九郎氏だが、彼らも、もはやキャリア20年の大ベテラン。かつては山田太一氏、野島伸司氏といった時代をリードした脚本家がいたが、今この時代を象徴する書き手がいないのだ。
そんなスター脚本家不在の中、すでに十分な知名度を誇り、またコントなどネタを書く力量のある芸人にオファーがかかるようになったのは偶然ではないだろう。
◇「出役」ならではの役者への「やさしいまなざし」