免疫療法、がん遺伝子療法、ビタミン投与、食事療法、水素温熱療法、イメージ療法、漢方、鍼、ワクチン投与、アーユルヴェーダ──日本には100種類以上のこうした“代替医療”が存在するといわれているが、米エール大学調査チームの発表によると、がん治療において「代替医療」を受けた患者の死亡率は、「標準治療」を受けた患者の2.5倍にものぼるという。
この調査は米国のケースだが、松戸市立病院の腫瘍内科医・五月女隆氏は日本の状況はより深刻だと語る。
「日本と欧米は代替医療へ取り組む姿勢が大きく違います。欧米は“痛みをとる”といったQOL(クオリティー・オブ・ライフ=生活の質)の向上を目的に、標準治療と並行して代替医療を受ける人が多い。それに対し、日本は“がんが治る”“がんが消えた”といった宣伝文句に煽られ、がんをなるべく早く治したいという気持ちで利用する患者が多い傾向にあります」
2012年の厚労省の発表によると、がん患者の34%が代替医療を利用しており、「関心がある」「準備している」と答えた患者は49%にものぼった。
今年6月に乳がんで亡くなった歌舞伎役者・市川海老蔵さん(39)の妻・小林麻央さん(享年34)もその1人だ。がんが発覚したのは2014年10月。麻央さんがブログで明かしたしこりの大きさから推測すると、この時点ではステージII。5年生存率は95.2%だった。
「“乳房を切りたくない”という思いと、3人目の子供を産むためにも排卵機能に影響する可能性のある抗がん剤投与を避けたい気持ちがあったのかもしれません。海老蔵さんと東奔西走して、何とか希望にかなう治療が受けられないか探していました」(麻央さんの知人)
彼女が受けた代替医療の一つが「水素温熱免疫治療法」。高濃度水素の風呂で体温を40℃まで上げ、体の免疫力を高めるという。しかし、この療法はまだ10年ほどの歴史しかなく、医学的根拠は薄い。麻央さんが通っていたクリニックの医師は、今年8月に再生医療を無届けで行っていたとして逮捕されている。