安倍政権の支持率が凋落すると、石破茂・元幹事長を筆頭に自民党内で一斉に安倍晋三首相批判が高まり、彼らはメディアで持て囃された。だが、それで何が変わっただろうか──。
石破氏だけではない。自民党内には平沢勝栄氏、後藤田正純氏ら約40人が発起人となった反アベノミクス勉強会(「明日を創る会」)が旗揚げし、安倍政権を4年間外相として支えた岸田文雄・政調会長まで「首相はタカ派、私はリベラル。政治信条の違いがある」とはっきり距離を置く言い方をした。
ところが、解散の声とともにそんな批判は雲散霧消してしまった。政治ジャーナリスト・野上忠興氏がいう。
「彼らは安倍批判でいかにも“正義の味方”であるかのような顔をしているが、これまで安倍政治の暴走を許した彼ら反主流派議員たちの責任も重い。かつての自民党であれば、総理・総裁が独断で政治を進めようとすると、反主流派が激しく突き上げ、全会一致が原則の総務会で大暴れして法案審査を通さないといった専横を許さない党内のチェックシステムが働いていた。それが組織の活力にもなった。
しかし、石破氏をはじめとした現在の反主流派たちは“負け犬の遠吠え”のように不満を言うだけで安倍政治に行動でブレーキをかけようとはしなかった。安倍首相が次の総選挙の公約に掲げた教育無償化、憲法9条への自衛隊明記にしても、自民党の従来の政策とは違うが、それを止める動きは見られない」