街にふらりと現れた芸能人。行きかう一般人と気さくに触れ合い、飲食店の撮影交渉も自ら行う。そんな突撃スタイルのロケ番組を見かけたことはないだろうか。こうした“仕込み”なしのガチなロケ企画が増える背景とは? そこには、昨今のテレビ業界を取り巻く環境の変化があった。
◇低予算時代、ロケのカロリーを省略
ある週の番組表を見渡してみると、『1億人の大質問!? 笑ってコラえて!』の「朝までハシゴの旅」や、『火曜サプライズ』の「アポなしグルメ旅」、『THE!鉄腕!DASH!!』(以上日本テレビ系)の「DASH0円食堂」、『ニンゲン観察バラエティ モニタリング』(TBS系)の「街に芸能人が現れたら声をかける?かけない」、『出川哲朗の充電させてくれませんか?』(テレビ東京系)、『鶴瓶の家族に乾杯』(NHK)と、週に6本の突撃スタイルの番組企画が放送されている。
まずはそこから『火曜サプライズ』の人気企画で、ゲストが街の人の意見をもとにおいしい店を訪ね歩く「アポなしグルメ旅」を例に挙げてみたい。
以前の放送ではアンジャッシュ・渡部建が地元・八王子で挑戦していたが、撮影冒頭「本当に何も決まってないの?」と不安がっていた。さらには店の主人も「ほんとに何もないんですね」と、事前連絡がないことに驚いている様子だった。
今までこうした飲食店のロケは、リサーチャーによる店のリサーチやディレクターによる取材交渉やロケハン、会議での店の選定、ロケ台本の執筆など事前の段取りが必要だった。もちろんその分、人件費がかかっていた。
また実際の撮影も、店の閉店時間に行わなければならないなど時間の制約も多かった。だがそれらをすべてタレントに任せ、1回で済ませることで、ロケにかかる手間を劇的に少なくすることができたのだ。
今やいかに低予算で番組を作るかが求められるテレビ業界。またアシスタントディレクターの人材難は深刻と聞く。そんな構造改革が求められる中で、制作者が出した答えの1つが、この「ノープラン」ロケなのではないだろうか。
◇予定調和ではない面白さを求められる