神戸製鋼所が取引先に納入するアルミ・銅製部材などの強度検査データを意図的に改ざんしていた問題は、大手メーカーの品質保証に対する信頼を大きく揺るがす事態に発展している。
なにしろ、神戸製鋼が10年以上前から組織ぐるみでデータ改ざんに手を染めていた部材は、さまざまな製品に使われていたことが判明した。
トヨタ、日産、ホンダなど自動車大手7社のクルマ部品のほか、JR東日本の新幹線、三菱航空機の国産初ジェット機MRJ、三菱重工業が打ち上げに成功したばかりのH2Aロケット、その他、自衛隊の防衛装備品にも使われていた。神戸製鋼によれば、供給先は200社にも及ぶという。
同社は10月8日梅原尚人副社長が開いた謝罪会見で、データの改ざん事実を認めながらも、
〈納入先の(強度やサイズに関する)要求を下回っていたが、日本工業規格(JIS)が定める水準は満たしており、法令に抵触しているわけではない〉
と釈明した。だが、昨年にもグループ会社でばね用銅線の強度偽装が発覚したばかり。杜撰な品質管理を繰り返す企業がいくら「安全性に問題なし」と強弁したところで、誰が納得するだろう。
「仮に各製品のリコールが起こらず神戸製鋼が損害を被らなかったとしても、失った信用と取引先の受注見直しを考えると、業績に与えるダメージは計り知れない」(証券アナリスト)
そもそも、今回の問題は神戸製鋼だけに限った話なのだろうか。鉄鋼産業を巡る苦しい環境変化を解説するのは、雑誌『経済界』編集局長の関慎夫氏だ。
「1990年代末に日産自動車のカルロス・ゴーン元社長が『日産リバイバルプラン』を実行して取引先を半減する荒療治を行った結果、NKKと川崎製鉄が合併してJFEスチールが誕生しました。また、インドの巨大メーカーに対抗すべく新日鉄住金ができたりと、鉄鋼業界に再編の嵐が吹き荒れました。
しかし、中国メーカーの大増産もあって市況は暴落。鉄鋼メーカーはどこも厳しい環境に置かれています。その中にあって神戸製鋼は合従連衡に加われず、スケールメリットを追うことができずに利益も出せないでいました」
確かに神戸製鋼は2017年3月期まで2期連続の最終赤字に喘いでいる。そこで、起死回生の「戦略部門」として強化中だったのが、銅・アルミ事業だ。