9月22日付の朝日新聞の「声」欄に、ある生命保険会社が行った子育てを給与換算したらいくらかという調査で、男性の11.5%が“0円”と回答した結果が出たことに対して、「子育ての価値を0円だなんて」と憤慨する、62才主婦の投書が掲載された。
《経済を動かす、といった社会的に高い評価を受ける仕事はあろう。しかし、人としての土台をつくる子育ての評価が低い人は、棺おけも自分で入るのだろうか》
この内容に母親たちは怒りを持って同調する。
「3時間おきに授乳、何をしてもやまない夜泣き…。心身ともにボロボロの状態が24時間365日続く。この苦しみに1円の価値もないんでしょうか」(0才の息子を持つ30才の母親)
「2才時の『イヤイヤ期』がつらかった。何をやっても『イヤだ!イヤだ!』と泣き叫ばれて精神的に追い込まれました。子供にとっても親にとっても、子育ては闘いなんです。必死で闘う日々を0円と切り捨てるアンケートには、大きなため息しか出ません」(6才の娘を持つ35才の母親)
この調査とは、明治安田生命が行った「子育てに関するアンケート調査」である。育児に対して対価がもらえるとしたら、年収ベースでいくらかを、既婚の男女(20~59才)1032人に聞いたもの。
その平均額は約237.5万円。男女別にみると、男性236.2万円、女性238.9万円。最高額「1000万円」と答える人がいる一方で、前述の通り、「0円」と答えた男性は11.5%も存在した。
専業主婦の妻と5才の娘を持つ夫は、“0円だ”と感じた胸の内をこう明かす。
「こっちは朝から満員電車に乗って仕事に行って、仕事中、喫茶店でコーヒーを飲む時間もなく疲れて帰ってくる。それなのに台所には汚れたお皿が残っていたり、洗濯物が干しっぱなしだったり…。そんな状態で『今日はママ会があったから忙しくって』なんて言われると…。育児が大変じゃないとは思わないけれど、息抜きする時間もあるし、足し引きしたら0円になるんじゃないかと…」(39才の父親)
児童心理に詳しい目白大学の小野寺敦子教授が分析する。
「男性の育児休暇や『イクメン』が浸透しつつある現代は、子育てを男女共同で行うことが当たり前になる過渡期です。そんな中でも『0円』と回答した男性がこれだけ多かったということは、彼らが『男性が外で働き、女性は家でご飯を作って子育てをする』という性役割分業意識が一般的であった両親や祖父母から影響を受けているということかもしれません。それは『育児なんかは妻が無償でするものだ』という価値観がいまだに根強いことの表れではないでしょうか」
専業主婦になった女性は、やるせない心情を吐露する。