小池百合子・東京都知事の「座右の書」が『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』(中公文庫)である。ミッドウェー海戦やインパール作戦など旧日本軍の失敗の事例研究を通じて組織運営の教訓を導いた名著として知られる。
今回の解散総選挙で「希望の党」の代表として選挙戦に臨んだ小池氏だが、当初目論んだであろう“政権を取る”という目論見は相当難しい状況になっている。総司令官の小池氏はどこで間違ったのか。「失敗の本質」をもとに探った。
◆あいまいな戦略目的
希望の党の戦略は、自民党政権の打倒以外になかったはずだ。ところが、候補者擁立では希望への参加を拒否した野党候補にも刺客を差し向け、自民党では石破茂氏、野田聖子氏らの選挙区に候補者を立てないという中途半端な作戦をとった。
そのうえ、小池氏は戦いのさなかに「選挙後の自民党との連立」までほのめかしたのである。政権打倒が目的か、連立のために条件闘争が目的なのか、戦略目標がぶれたことで有権者の失望を買った。
◆アンバランスな戦闘技術体系
希望の党は政治家として必要なスキルを身につけていない多くの新人を各選挙区に送り込んだ。中には9月に開校した若狭勝氏の政治塾「輝照塾」に参加したばかりの塾生も選ばれた。
技術的問題で全く戦果をあげることができなかった日本軍の秘密兵器「風船爆弾」(*注)を思わせる。
【*注:太平洋戦争で日本陸軍が開発した気球に爆弾を搭載した兵器。約9300個が米国に向け発射された。268発が米国に到達したと見られている】