かつて「エロの最前線」はテレビだった。女優やアイドルの卵たちが今では考えられないエロ企画に挑戦し、番組をきっかけにブレイクした女性も少なくない。1980年代、各局が打倒『オールナイトフジ』で鎬を削るなか、多くの独自路線で人気を博し、1980年から13年半続いた長寿番組となったのが『トゥナイト』(テレビ朝日系)である。
作家の利根川裕氏を司会に起用し、三浦和義のロス疑惑や豊田商事事件など硬派なネタを扱う一方で、エロへの取材も徹底。風俗嬢にスポットを当てた、映画監督の山本晋也氏による風俗街レポートは名物コーナーとなり、放送を重ねるにつれて尺が伸びていった。山本監督が当時を振り返る。
「初めの頃は風俗店のレポート中にヤクザと揉めたり、アクシデントが多かった。でも、こっちが真剣な姿勢を見せると、歌舞伎町の人たちも『あんたなら面白い企画をやってくれそうだ』と協力的になってくれた。視聴者からも『こんな店があったよ』という情報が寄せられた。みんなで作った番組でしたね。とりわけ反響が大きかったのは、ノーパン喫茶。僕が発掘した『イヴちゃん』の人気は凄まじかったなぁ」
「イヴちゃん」は女優顔負けの美貌を誇るノーパン喫茶嬢で、89(Dカップ)・58・88という抜群のスタイルを同番組が、“ノーパン喫茶の女王”と紹介するや人気が爆発。にっかつロマンポルノ『イヴちゃんの花びら』で女優デビューした。
「最近、インターネット番組で当時の映像を流すことになったから、許可を取るために久しぶりにイヴちゃんに連絡した。風俗嬢はお店で働いていた過去を忘れたがるコが多いんだけど、彼女は『青春時代の思い出だから、是非使ってください』って快諾してくれて。イヴちゃんは、風俗業界から出た初めての女優じゃないですかね。アングラな世界にいる女の子を世に送り出せて良かった」(山本監督)