原辰徳・監督時代、巨人は若手育成に力を注ぎ、かつての「欲しい欲しい病」を封印していたはずだった。しかしいつのまにか、1990年代さながらの“4番・エースコレクション”的大補強を復活させてしまった。かつての新人王で、ゴールデングラブ賞外野手の松本哲也が今季限りでユニフォームを脱いだことは、「『育成の巨人』の終焉」の象徴的な出来事だった。
こうした状況に憤るのは、球界のご意見番こと巨人OBの広岡達朗氏だ。
「引退した松本は、チャンスをもらったらセンターに打ち返し、とにかく走れという巨人伝統の教えを守って新人王にも輝いた。しかしそんな選手も、次から次によそから選手を獲って来るから、9年間いてもほとんど試合に出ることができなかった。何のための補強か、理解できない」
阪神の元球団社長・野崎勝義氏も続ける。
「育成の巨人を構築した立役者・清武英利GMが解任されて以来、当時のスタイルを否定しなければいけないという雰囲気ができあがっている。それが育成制度を弱体化させてしまった」
若手が補強戦力との競争に負けて成長しきれない状況は、今季のサード・岡本和真、セカンド・山本泰寛、吉川尚輝らにも当てはまる。
そのように選手を飼い殺す状況のなか、当然ながら聞こえてくるのは監督やコーチの采配や資質を疑問視する声だ。