【著者に訊け】石田衣良氏/『裏切りのホワイトカード 池袋ウエストゲートパークXIII』/文藝春秋/1500円+税
〈人間って成長しないし、格差はなくならないものだよな〉〈この世に上下があるなら、おれは積極的に下が好きなだけだ〉
石田衣良作『池袋ウエストゲートパーク』シリーズの主人公、〈真島誠〉の言い分である。家業の果物屋を手伝う傍ら、〈池袋のトラブルシューター〉との異名も取る彼は、街や人の変遷を店先から定点観測してきた、まさに下から目線の語り部。シリーズ開始から20周年を数える今も、店の2階に母親と住み、池袋で長期政権を築くGボーイズのキング〈タカシ〉らと、街の厄介事に首を突っ込む毎日だ。
シリーズ第13作『裏切りのホワイトカード』でも、法外な報酬を餌に〈出し子〉を集める特殊詐欺の罠など、彼の元に舞い込む依頼からはこの国の今が透けて見え、我らがマコト君はというと相変わらずダメで、熱くて、とことん優しい。仮にこれを正義と呼ぶなら、群れず属さずブレない彼の正義を私たちは断固信用する!
「池袋なら池袋という街を細心の注意を払いながら、薄~くスライスしていくと、その向こうにメディアでは語られない、ありのままの今が透けて見えて、物凄くキレイなんだよねえ……」
と、かつて著者は語っていた。現にIWGPシリーズは一種の社会現象にまで成長し、一時は西口公園に行けばマコトに会えると、錯覚する者もいたほどだ。