生産性の国際比較に注目が集まっているが、その話題には必ず、日本の生産性が低いことへの指摘がセットでなされている。では、日本の生産性をあげるにはどんな方策がよいのか。経営コンサルタントの大前研一氏が、働き方改革ではなく、“クラウド”の活用で、大幅に生産性アップを実践できる例を紹介する。
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これまで本連載では安倍政権の目玉政策「働き方改革」に関連して、日本企業の生産性を高める方策を解説してきた。
たとえば、海外の企業に比べて生産性が非常に低いホワイトカラーの仕事を定型業務と非定型業務に分け、定型業務は標準化してアウトソーシングするかAI(人工知能)に置き換えるべきであり、それはクラウドコンピューティングやクラウドソーシングを活用すればすぐにできる──といったことである。
その象徴が、2013年に創業した「スキャンマン」という新興企業だ。主な事業はその名の通りスキャン代行。すなわち、社員が顧客の自宅やオフィスまで出向き、名刺や領収書、契約書などをスキャンしてデジタルデータ化する派遣型スキャン代行サービスである。
この会社は、今の日本ではある種の革命児的な存在だと思う。なぜなら、同社が採用しているようなクラウドサービスを全面的に活用すれば、定型的な間接業務の生産性を飛躍的に高めることができるからだ。
たとえば、名刺管理は「Sansan」や「Eight」、経理は「freee」や「弥生会計」、契約書は「Agree」や「CLOUDSIGN」、データ入力は「AI inside」などのバックオフィス効率化ツールを導入する。これらは、クラウドで運用するためコストが安く、かつ社員がパソコンやスマホから自由にアクセスできるので「いつでも、どこでも、誰でも」使えて、バックアップもクラウド上に確保できる、という仕組みである。