安倍晋三・首相は「自衛隊の明記」という憲法9条改正を公約に掲げて選挙戦に臨んだ。今後、国会での改憲発議が具体的なスケジュールとして盛り込まれる。最短なら2018年6月の通常国会会期末に衆参の3分の2以上の賛成で改正案が発議され、発議後6か月以内に国民投票が行なわれる。
「憲法9条の1項(戦争の放棄)、2項(戦力不保持)を残しつつ、自衛隊を明文で書き込むという考え方は国民的な議論に値する」
多くの有権者は、国会で憲法改正が発議されるにしても、読売新聞で発表した安倍私案に沿った“穏健な改正案”になると考えているはずだ。自民党の憲法草案に盛り込まれている「9条2項廃止」や「国防軍創設」は撤回したと思われている。
ところが、総選挙の結果は改憲論議に劇的な変化をもたらすことになる。憲法改正案の国会発議には野党を含めた合意形成が必要とされる。これまでは自公維VS民進・自由・社民・共産という保革の2極対決の構図の中で、最大野党の民進党側が「安倍政権とは憲法改正の議論はできない」と、協議そのものを拒否してきた。
しかし、国会の勢力図は大きく変わる。希望の党が生き永らえた場合の前提だが、これまでの自公維とは別に希望という新たな保守勢力が生まれ、共産ら左派勢力を加えた3極構造になる。その結果、左派政党が改憲議論を拒否しても、国会では、保守2勢力の与野党協議で改正議論を進めることができるようになるからだ。
そして与野党協議で自民党の草案が復活する可能性が高い。政治評論家の屋山太郎氏が語る。