超絶技巧で再評価の機運が高まる明治工芸の作品と、そのDNAを引き継ぐ15人の現代作家の作品が堪能できる特別展、「驚異の超絶技巧!~明治工芸から現代アートへ~」(三井記念美術館で12月3日まで開催)が話題となっている。
本展のメインビジュアルを飾るのが、安藤緑山(ろくざん)の『胡瓜』。前回の展覧会『超絶技巧!明治工芸の粋』(2014~2015年)にも作品が出展され、その精巧さに見とれてガラスケースに額をぶつける人が続出したという。
そんな明治工芸の名匠の“正体”が、このたび明らかになった。明治学院大学教授で美術史家の山下裕二氏が語る。
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安藤緑山という牙彫師(象牙など動物の牙に細工する彫刻家)に関する生前の記録は、『東京彫工会会員役員人名録』にある明治末期から大正期の住まい(現東京都台東区)と師匠の存在のみ。出身地や生没年すらわからない、極めて謎めいた存在でした。
ですが、ここへきて予期せぬビッグニュースが舞い込みました。
なんと本展を機にご遺族が名乗り出てくださり、写真も提供していただけたのです。その生涯や制作の詳細のついては今後調査を進め、三井記念美術館の小林祐子学芸員による論文として発表される予定です。牙彫師・安藤緑山、そして明治工芸の再評価に繋がる貴重な報告となることでしょう。
緑山の作品でまず目を奪われるのは、「これはホンモノか!?」と見紛うようなスーパーリアルな造形。そして、その発想力です。