希望の党を立ち上げて、安倍自民に立ち向かった小池百合子氏の失速は、起こるべくして起きた事態だったのか。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。
* * *
どんな劇場においても、重要なのはセリフ。役者が吐く言葉に、説得力があるかどうか。聴衆が聞いて納得するか。リアリティがこもっているか。それが役者にとっての、いわば全てと言ってもいい。
パリ出張中、小池百合子都知事はキャロライン・ケネディ前駐日米大使との対談で、選挙についてこう振り返りました。
「都知事に当選してガラスの天井を一つ破ったかな。もう一つ、都議選もパーフェクトな戦いをしてガラスの天井を破ったかなと思ったが、今回の総選挙で鉄の天井があると改めて知りました」(2017.10.23 産経新聞)。
世を沸かせてきたはずの「役者」がパリの華やかな舞台で言い放ったセリフが、「ガラスの天井」「鉄の天井」。これは聞き捨てならない。看過できない。
女性の活躍を阻む見えない壁の意味として使われてきた「ガラスの天井」。そして「鉄の天井」をここでひきあいに出すとは………。まるで「希望の党」の失敗を「社会のせい」「他者のせい」にしていませんか。つまりは、女性だから不当な壁に阻まれ負けた、と? まったくのお門違い。
なぜなら小池さんは、「チャック女子」だからです。背中のチャックをおろして着ぐるみを脱ぐと、中から闘争本能ガチガチのマッチョが出てくるからです。
「チャック女子」という言葉について少し解説すれば……女性活躍推進プログラムの専門家、プロノバCEO岡島悦子氏による造語といわれ、「外見は女子の着ぐるみを着ているが、背中のチャックを下ろすと中身はおじさん、というオス化女子のことを指す。女性が視点も思考パターンもおじさんと同一化してしまう現象のこと」(「Woman type」2014.2.20)。
まさしくぴったり。戦士として政界を渡り歩いてきた小池さんの思考回路が今回、「排除します」というセリフではっきりと見えた。いくら女の着ぐるみを着ても、有権者はきちんと中味を見抜いているのです。
何よりも残念なのは、小池さんの着ぐるみの中にあるのが「政治闘争」の要素だけで、あとは空っぽだということ。戦いに勝つことしか眼中にないこと。勝っていったいどんな政治をしたいのか、どんな社会にしたいのか。伝わってこない。